書籍紹介 「セルフコントロール」(池見酉次郎・杉田峰康)

書籍紹介

社交や雑談のもう一つの機能は、親交への橋渡しをすることである。夫婦の間が、何らかの理由で、気まずい状態になっているとき、どちらかが、その日に体験した興味ある出来事について話しだしたり、意見を述べたりする。相手もこれに応じて、そこに共通の感情がわいてくると、お互いに再び、打ちとけることができる。カウンセリングや心理療法に際しても、旅行、スポーツなどのトピックについて、あたりさわりのない話をすることがあるが、それも決して無駄なこととは限らない。誰でも、医者やカウンセラーの前に座って、気軽に悩みを打ち明けるというわけにはいかないし、治療者もまた、相手の性格や態度をうかがい知る必要がある。お互いに相手を観察し、評価するチャンスがいるものである。そんなとき、雑談を進めながら問題の核心に入ってゆくといった方法が、ふううに用いられる。また、一般にも、雑談のとり交わしの中で、今後とも親交を維持したいと思う人をひそかに選んだりするものである。(p229)

「セルフコントロール」 池見酉次郎・杉田峰康 1998年 創元社(写真は同書カバーより)