十六 ある人が彼の息子を遠方に旅立たせたため、または彼の財産を失ったために、悲しんでいるのを見たら、この人は外的な事物を失ったために不幸になっているのだと、勝手に早合点してはならぬ。むしろきみは、心の内でこう言うように心掛けよ、「彼を苦しめているのは、この不幸な出来事ではない(なぜなら、他の多くの人々は、そうしたことのためには苦しまないから)、それについて彼がいだく観念のために苦しむのだ」と。たとえ彼と共に泣かねばならない時でも、理性ある言葉をもって彼をいやすことを怠ってはならない。ただ心すべきは、きみも共に心から嘆かないことである。(p60)
「幸福論(第一部)」 ヒルティ著、草間平作訳 1935年 岩波文庫



